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第6話 : ドリンクバー

執筆者の写真: Y. NakamuraY. Nakamura

更新日:2018年8月3日



生涯で2度目となるレコーディングは、モンク・コンペティションへの応募曲だった。

そしてレコーディング直前になって、僕はある決断をする。

それまで曲を5人編成でやっていたのを、

3人編成のピアノトリオ(ピアノ・ベース・ドラム)にするということ。

曲を作る上でのお題が、「ドラマーの創造性を引きだす曲」というもの。しかも編成が小さければ小さいほど良いというブラウン氏との会話で知った(第3話「ジャズの作曲とは?」参照)ので、ミニマムな形にたどりついたのだ。

曲の出だしはピアノの単音の旋律とドラムのみ、そして少したってからベースが加わりピアノも両手を使って弾くというような流れに変えてみた。

その形でリハーサルをして、そしてレコーディング当日。

普段はライブスタジオとしても利用されているスタジオなので、僕らのレコーディングは夕方からのライブと被らないように昼間の時間帯。

僕はちょっと早めに乗り込んでドラムセットの搬入を手伝ったりして、6月だったこともありレコーディング前に結構汗だく。

まず各パートの音のチェック。ドラムだけでバスドラ、スネア、シンバル、その他、そしていくつかのサウンドチェック(マイクのボリュームの具合とかですね)。そしてベースの音のチェック(ベースは単音なので割と楽)とピアノの音のチェック。

さて、いよいよレコーディングの開始です。リハーサル通りにとりあえず一回録ってみる。

僕のピアノが結構とちったりしてなかなかうまくいかないんだけど、一番困ったのが、曲の長さの問題。

曲を提出する上での応募要項には曲の長さは6分以内となっていた。「7についての曲なんだから7分7秒でできたらおもしろいなー」というアイディアもあったんだけど、応募要項には従わないとね。

何回か試してみたいけどやっぱり6分を超えてしまう。

そこでまた大胆な決断。

「ピアノソロなくしちゃおうか?」

一応自分の曲だし、自分がリーダーだし、自分の見せ場も作ろうと思って入れたパートだったけど、曲のお題は「ドラマーの創造性を引きだす曲」。

結局ピアノソロをカットして何度かテイクを重ねる。そしてこれはOKだなと思えるテイクが、終了1時間前ぐらいに録れた。

そしたらメンバーも僕も安心できたせいかテイクを重ねるごとにどんどん音が良くなっていく。

終いには2~3テイクぐらい良いものが録れたので「もう録れ高は充分」ということで「Lucky Seven」の収録は終了。

ちょっと時間が余ったので、最後はセッション的にジャズスタンダードの「All the things you are」と「Nardis」という曲でみんなで遊んだ。ドラムとベースは普段はセッションバンドで活躍してるので、やっぱり楽しそう。

「Lucky Seven」の複雑な譜面から解放されて、のびのびと演奏。

その2曲も一応録音したので、みんなで聴き返してみる。ベースの美咲ちゃんは録ったばかりのジャズスタンダードを聴いて「やっぱり生き生きしてますね。」とコメント。

みんな疲労困憊だったけど、なんとかその日のレコーディングは無事に終えて一安心。

片付けをそそくさとみんなでやって、記念撮影(提出資料としても使用)をパシャリ。みんな疲れ切っているけど充実した表情。

まだ夕方の4時ぐらいだったので、スタジオの先にあるSゼリアで簡単な打ち上げをしよう。(二人は車だったのでスイーツ+ドリンクバーでしたが。)

僕はチャリだったので、お二人の車を追う形で集合。

梅雨どきの6月なのに、晴れていてカラッとした、最高の天気だったなぁ。

今までそんなに2人とは話をしたこともなかったんだけど、スイーツをつつきながら、ドリンクバーを往復しながら、「どんなアニメが好きなの?」みたいなたわいもない話で盛り上がりました。

その数ヶ月後、ワシントンDCの超高級ホテルでまた一緒のメンバーでディナーを食べることになるとは、この時はまだ、誰も知らなかったのでした。

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